EXHIBITIONS

2015年3月21日(土)〜4月2日(木)
「グループ展PRISM 2015」
Group Exhibition, “PRISM 2015”
参加アーティスト:
黒丸、野尻恵美、深幸治、溝口亜紗、
百合野美沙子、米田由美、
JULIAN ROGERS(ジュリアン・ロジャース)

F通りと9番街の角の歩道から、石造りの階段を数段上がると、荒びれた教会の扉がある。高さはゆうに4メートルもあろうか、ベネチアン風で上部がアーチを成し、両開きになっていた。把手の辺りは、いつも手垢で汚れ、何度も塗り重ねられたベージュ色のペイントが、扉を開閉する度に剥がれ落ちた。建物の中に一歩足を踏み入れると薄暗く、さらに数十段木造の階段が上に伸びていた。そこは、礼拝堂のようであった。道路に面した壁面には2カ所、同じように長大なベネチアン風の窓が穿たれていた。ダウンタウンの建物の群れに埋もれ、一見何の建物か判然としないが、唯一尖塔の十字架が教会らしさを保っていた。

数十年前、University of California、San Diego の院生だった私は、卒展を終え残すは卒論を提出するばかりになっていた。その頃、学部の事務のほうからアトリエを明け渡すように言い渡された。実を言うと、当時の私は無許可で大学のアトリエに住みついていたのだ(公然の秘密ではあったが)。途方に暮れていた私に、院生のアドバイザーからダウンタウンにアーティストがシェアしているアトリエがあるが、行ってみないか、と声を掛けられた。渡りに船と、下見に出かけてみると、通りの角にある古びた教会のような建物であった。扉の周りには、ホームレスや不審者?が階段に横たわったり、座り込んだりしていた。扉を開けようとすると“gimme a quarter”と手を突き出してくるのには閉口したが、選択の余地はなかった。私は、その場ですぐさま契約を交わした。

引っ越しの日も、階段の周りにたむろしている人たちに向かって“Excuse us” といいながら4メートル近くもある扉を開け放ち、友人と荷物を運び込んだ。建物に足を踏み入れた瞬間、扉を大きく開いたせいで光が差し込み、右側の壁面に下見に来た時には気付きもしなかった大きな虹の絵が浮かび上がった。以前、どこかで「虹は夢や希望、幸運を象徴する」というのを読んだことを思い出し、思わぬ、無言の歓迎の言葉に少し気持ちが、和んだ。3階の聖務を司っていた部屋が私のアトリエになった。そこは、通路側でベネチアン風の細長い窓があり天井が高く、明るい40坪ほどの空間であった。結局その後、8年近くもお世話になるとはその時は考えもしなかった。

今、グループ展 PRISM 2015 を企画して、当時のことが頭をよぎる。Zone のある桜井市場は私がかつて住んでいたサンディエゴの教会のように古い建物である。グループ展PRISM 2015では、7名のアーティストの個性をプリズムで分光しZoneの空間に7色の虹(ここは日本なので7色です)を架けたい。アーティストや訪れる人たちに夢や希望、幸運を与えることができればと、夢を膨らませている。

 

コンテンポラリーアートギャラリーZone 代表 中谷 徹

黒丸

米田由美

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百合野美沙子

JULIAN ROGERS(ジュリアン・ロジャース)

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溝口亜紗

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野尻恵美

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深幸治

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