スポークン・ワード「荒野の虹」 スポークン・ワード(Spoken word)は、話し言葉による詩や物語を「自分の声で語る」パーフォーマンスアートである。これまでのポエトリー・リーディングと異なり、音楽の演奏、舞踏、美術など複数の表現手段が使用されている。しかしあくまでも「話し手」が中心である。 1980年代のニューヨークで巻き起こったラップミュージックやヒップホップは、新しいサウンドもさることながら、言葉の優位性が際立つ。この新しい音楽の流行によって1990年代になって、言葉の復権を求め、アメリカの詩の世界でスポークン・ワードに対する関心が高まった。しかしこの高まりは、1950年代のアレン・ギンズバーグに代表されるビート・ジェネレーションと違い、政治的な動機を必要としない詩の新しい形を生んだ。また、表現形式も多様化した。 Minoriは1989年から2004年にかけて、サンフランシスコのポエトリー・リーディングシーンに確かな足跡を残している。当時の日本のカルチャー雑誌「SWITCH」の1994年12月号「ポエトリー・シーンinサンフランシスコ」にMinoriが次のように紹介されている。「さらにもっと異色なのは日本人ミノリのポエトリー・リーディングにシゲキのキーボードという組み合わせにのってビルマ人の舞踏家リドがパフォーマンスをするという朗読の使い方である。これなどは詩の朗読がサウンド・パフォーマンスとして用いられていると思う。」 丁度その頃、言葉の復権を目指し、サンフランシスコのカフェやブックストアーで活発にポエトリー・リーディングが行われていた。MTVの「Spoken Word Unplugged」が始まったばかりのころだ。 Zoneでのファンドレージング・イベント、スポークン・ワード「荒野の虹」はMinoriの即興詩と立体作品に、観客が奏でる音との組み合わせによるサウンドパーフォーマンス。桜井市場の一角に、音と言葉が織り成す詩空間を創出させる。この日ここに集まる人々との一期一会のセッションを楽しんでいただきたい。 コンテンポラリーアートギャラリーZone 代表 中谷 徹 |